学生時代から変わっていないこととして、小説を読むのは習慣になっていますね。
現在は時代小説に移行しつつありますが、推理小説というジャンルは子供の頃から読んでいます。
そんなわけですから、推理ゲームもかなりの本数をプレイしましたね。
今回紹介する作品は、ストーリーでもキャラクターでも無く、あくまで叙述トリックに重点を置いてます。携帯機を片手にじっくり取り組んで頂きたいですね。
とある裁判が終わり、ビルの屋上で佇んでいた検事『芳川 樹(よしかわ いつき)』は、何者かに突き落とされてしまった。
次に芳川が目を覚ました時、そこは『冥界』と呼ばれる場所であり、この場を管理している閻魔大王『ヤマ』から意識だけ肉体と切り離されてここに辿り着いたことを知る。
芳川の現世での行いを痛烈に批判するヤマ。
それに対して芳川が批判しようとすると、ヤマは一冊の書物を取り出した。
『アカシャ』と呼ばれるその書物は、この世で起こった全ての出来事を記録している。
ヤマは現世で起きた事件に対してアカシャを読み、例え迷宮入りになったとしても、あの世で公平に判決を下す材料を提示することが出来るのである。
ところが、アカシャは飽くまで事件の内容を綴るものであるため、巧妙な犯行に対しては事件の真相が辿り着けないものもあること、そして事件の増加から、ヤマは芳川に仕事の手伝いを持ち掛ける。
全ての仕事が終われば現世に返すことを条件に、芳川はアカシャを開き始めた。
本を読み進める感覚でプレイしながら、事件の真相を文章のみで探っていく、思考型アドベンチャーとなっています。
~謎を解くための鍵、『アカシャ』~
謎を解くためにプレイヤーに与えられるものは、事件の内容を綴った『アカシャ』のみであり、これ以外に用いることはありません。
アカシャにはルールが存在し、
・本に書かれていることはすべて真実だが、犯人は嘘をついている可能性がある
・動機の強弱は重要ではない
・トリックや犯人は、超能力や宇宙人など超常的な事象によるものではない。冥界の住人も現世の事件に一切関与していない
というのが前提です。
つまり、ゲームのタイトル通り真相に近づくにはトリックとロジックのみ。
他の推理ゲームと違い、アドベンチャーパートで証拠品を集めなければ解けないということは無く、それら全て必要なものはアカシャに記載されている、ということです。
~推理パートと解決パート~
実際にどのようにしてアカシャを用いて捜査するのか、ですが、これは解説するよりも実際に例を見てもらった方が早いです。
下記に用意した例文をご覧下さい。
尚、ゲーム本編はもっと高度ですので、その点もご安心下さい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
商店街を歩きながらシガラキは今度のブログの内容を考えていた。
ここ最近は全くネタが思い浮かばない。たくさんのゲームをプレイしているにも関わらず、どれも今一つピンと来ない。
アクビを噛み殺しながら歩いていると、目の前にファーストフード店が見えた。
「腹へったな……」
昨日の夜は食事をとっていないのだ。本能だろうか、気づけば自動ドアの前に立っていた。
愛想さえマニュアルに記載されているのではないかと疑ってしまいそうになる店員の笑顔に、こちらも機械的に対応しながらセットメニューを注文する。
運ばれたハンバーガーを口にした瞬間、昨日の昼にもこの店に来たことを思い出したが、最早後悔しても仕方がないのでやはり機械的な動作で食事をする。
シガラキは改めて考える。
何故、これほどまでにネタが浮かばないのだろうか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
文才の無さに唖然としますが、そこはスルーでお願いします。
さて、ここで赤字の部分に注目です。
アカシャにはこのように赤い色で綴られた文章『キーワード』を最大で5つまで、ストックすることが出来ます。
↓のような感じですね。
①たくさんのゲームをプレイしている
②昨日の夜は食事をとっていないのだ。
③愛想さえマニュアルに記載されているのではないかと疑ってしまいそうになる店員の笑顔
④昨日の昼にもこの店に来たことを思い出した
⑤何故、これほどまでにネタが浮かばないのだろうか?
この状態で『推理実行』のコマンドを選択することで、キーワードから『ヒラメキ』を得ることが出来ます。
上記の例なら、
①×②…シガラキは徹夜上等の精神でゲームに没頭していたのではないか?
④×⑤…昨日同じ店で食べたことに気付かないのだから、頭の回転が鈍っているのではないか?
というのがヒラメキですね。
ここまでが『推理パート』と呼ばれるシステムです。
では次に進むのが『解決パート』。
今までのヒラメキから必要なものを当てはめて事件の真相を暴きます。
こんな感じですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
問1.ブログのネタが思い浮かばないシガラキだが、体調面に問題は無かったか。ヒラメキから1つ答えよ。
( )
問2.ネタが思い浮かばない直接の理由をヒラメキから1つ答えよ。
( )
問3.そもそも悪いのは誰か。次の選択肢から答えよ。
・ファーストフードの店員
・シガラキ
・シガラキを誘惑するアハーンウフーンなゲーム
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いやー難問でしたね(棒
何となく概要は分かりましたでしょうか?
ここでは最低限のものしか挙げていませんが、ヒラメキにはミスリードとなるものもあります。
総当たりで探すことが出来るとはいえ、ある程度は自身で筋道を立てておかないと後で泣きを見るハメになりますよ?
~トリックだけに思考を注げる~
大抵の推理ゲームには、アドベンチャー要素として多彩な登場人物や物語、そして複雑なバックボーンなどを主人公と共に追いかけていくのが醍醐味です。
しかし、時には推理するための証拠品と証言集めでフラグを立てるのが面倒くさいと感じてしまう作品もあるんですよね。
そのゲームの出来が悪い、と言ってしまえばそれまでですが、TRICK×LOGICではそれらの要素を全て取っ払い、あくまでどのように犯行が行われたのかを解明することに注がれています。
これによって推理のための前段階が無くなり、推理そのものに全ての意識を委ねることが出来るのが本作の特徴でしょう。
物語を楽しみたい人にとっては無粋に感じるかもしれませんが、推理に飢えている人には非常に大きなメリットだと思います。
~シナリオの出来、ゲームの出来~
シナリオは我孫子武丸や有栖川有栖、黒田研二など、豪華な7人の作家によって作成されているだけあり、ミステリとしても読み物としても楽しめます。
最後までアカシャを読み終えただけでは犯人も犯行も分かりませんが、上記のキーワードからヒラメキを発見していくことで、少しずつ事件の全容が形になっていく過程とシナリオをクリアした時の快感がたまらないです。
煮詰まった時、何度も推理実行をしていると芳川以外の登場人物が自身の推理を披露してくれたりするのですが、気分転換だけでなく別の角度からの視点やミスリードに気付けますので、多少なりとも冷静な思考に戻すための工夫が成されてるのはありがたいです。
~タイトル通り過ぎる点をどう捉えるか~
ミステリの部分は文句無く面白いのですが、犯人を当てたらそこまでなので、深い物語を期待している人には肩透かしかもしれません。
主人公の芳川にも物語はありますが、正直蛇足な印象は拭えませんでした。
いっそ芳川にストーリーを付随せず、ヤマの手伝いで冥界から呼び出されたくらいの淡白さでも良かった気がします。
購入の分岐点は分りやすいので、とにかく推理モノに触れたい!と考えているのであれば、値段もお手頃ですしプレイしても損はしないでしょう。
考えを整理して突き詰めて解き明かしたい方には、是非ともプレイしてみて欲しいと思います。
~余談スペース~
・芳川とヤマ以外にも個性的な人物が登場しますが、もう少し彼らの出番があっても良かったかなぁ、という気がしないでもないです。
とはいえ、ヤマもアカシャを開いている間はそこまで出番がないですが。
・ヤマの声を充てているのはデーモン小暮閣下です。
閣下の演技、非常に上手いですね。流石は閣下。
・逆に芳川の棒読みがヤバい。
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