2030年5月、国立公文書館がテロリストにより占拠。
テロリストは『警察庁警備局管理文章分類記号/ホ-88』の要求を目的に立て籠もる。
通称ハチハチ文書と呼ばれるそれは、クーデター未遂事件を起こしたと云われている道場陸将補の取り調べが記載されている調書である。
公安9課は速やかにテロリストの制圧を行うが、肝心のハチハチ文書は読まれた形跡こそあるが乱雑に放置されており、訝しがる。
同時に、あらかじめ仕掛けられた爆弾が作用し、テロリストの目的、身元は曖昧のままとなった。
そして3ヶ月後、公安9課は返還記念式典に参加する比留間元大臣暗殺計画を阻止するため、旧電脳都市ベルタルベに向かっていた。
彼らはまだ知らない。
狩人の領域に、足を踏み入れたことを。
『素子が人形遣いと出会わず、9課に残留していたとしたら』を描いた攻殻機動隊 stand alone complexを舞台としたFPSになります。
ゲームとして、一つの物語として見所のある作品になっています。
〜安心の攻殻クオリティ〜
ゲームの進行は章仕立てとなっており、一つの章にある複数の任務をこなすと次の章へ…といったミッション受注型になっています。
プレイヤーキャラは前作の『攻殻機動隊 stand alone complex』(以下s.a.c)から引き続き草薙素子とバトー、そして新たにトグサとサイトーの4人から選択し、タチコマと共に出撃します。
サイトーがプレイアブルキャラクターに昇格しているのはかなり新鮮味を感じます。彼なりに状況を整理して喋るシーンが多く見れるのも嬉しかったですね。
s.a.cの雰囲気はそのままに、単発的な任務に見えることが少しずつ繋がっていく、点と点が線になるこの感じは攻殻らしいなと感じました。
進行の途中やミッション完了時にはムービーが入り、台詞が多少変わる程度のものですが、使用しているキャラクターによって反応に差異があります。
例えばとあるミッションの深部に到達した際、サイトーは『鷹の眼』の影響を、トグサは義体化の少ない自身の安全を心配します。
一応、バトーは体力が多い、サイトーはライフルのスコープを覗いている時に手ブレが無いといったキャラクターの性能差も存在します。実際にプレイするとフレーバー程度の差しか感じませんでしたが…。
〜ライトでもない、ヘビーでもないFPS〜
僕がゲーム下手なのは当ブログで散々言ってますが、FPSはその中でもかなり苦手なジャンルです。
それを自分なりに分析した結果、主観からの立ち回りにあるのだと思われます。
自分と相手の位置、遮蔽物の有無、そしてそれぞれの持つ武器の特性と交戦距離といった、限られた視点と時間から来る判断をこなし続ける事が上手くいかないなと感じてはいるのですが、どうも上達した気がしなくて頭を抱えます。
TPSだとここまで悩まないので、苦手意識が先行している可能性もあるにはあるのですが…。
狩人の領域はマシンガン系統を撃ち続けると銃口が上がっていったり、後半は敵の数が多くて立ち回りが忙しい(本来とは若干別の意味で。後述)所があります。
ミッションの中には時間制限があったり、特定の人物の保護or捕獲とバラエティに富んでいるのは嬉しいですが、大抵は敵の殲滅と併せて行うので初見は結構焦りました。
攻殻の雰囲気も関わっているからか、アニゲー向け、といったライトなFPSの作りにはなっていません。
・様々なジャンルの武器を扱う事が出来、そこまで細分化されていないこと。
・基本的には前から敵が出てくること。
・ロックオン機能搭載。
・ある程度の命令を下すことが可能なので、タチコマがカバーしてくれる。体力が少ない場合はタチコマに乗って避難が可能。しかもその間はタチコマを操作出来る!
・道中に回復パックがあるので多少の無茶はリカバリーしやすい
・FPSに必須の立ち回り、交戦距離はあって困ることは無いがそこまでクリアのウェイトを占めない。
ここはFPSとしては緩い部分です。
・ミッションの内容によって難易度に差異がある。
人によって何が難しいのかは分かれる。
・場面によっては全方位から狙われるので、その場合はPSPということもあって操作が忙しい。
・やはり多少は射線と交戦距離が必要。加えて攻殻という作品を理解した上での独特の立ち回りを行う場面も。
というのが従来のFPS+αの難しい部分でしょうか。
適当に撃って終わりとはいかず、かといってFPSの基礎知識を頭に入れるほどではない、ちょっと不思議な難易度になっています。
〜タチコマと戯れよう〜
ある意味このゲームの一番の目玉かもしれません。
共闘するタチコマのパーツを設定、つまりタチコマを自分好みにセッティング出来ます。
タチコマは異なった性格を持つ4種類、両腕と背面ポッドの左右、そして口(……口?)にパーツを取り付ける事が出来ます。
武器によって弾数や火力、適正距離が違うので、タチコマの性格や任務の内容と相談しながら色々試せます。
敢えて見た目やネタのセッティングをしてみるのも一興で、公式ではまずお目に掛かれない奇抜なタチコマを作り上げられるのはこの作品しかありません。
9課のメンバーと違う武器種もあり、思考型戦車らしい大型武器を扱えるのが特徴でしょうか。
中には画面全体にダメージを与えるとんでもない代物も用意されています。使い所は難しいですが…。
カラーも変更可能で、色が変わると少し雰囲気が違って面白いです。細部は違いますが、赤くするとARISE版の『ロジコマ』に見えなくもない…かな…。
攻殻のゲームは前作と前々作があり、どちらもタチコマ(フチコマ)を操作する、もしくは一部操作といった形でした。
今回も操作は出来ますが、ここまでタチコマの在り方そのものに手を加えられるのは今作くらいです。
コレ書いた時点で次回作出てませんが。
〜タイミングと時代に恵まれれば…〜
この狩人の領域、ゲームの内容そのものに不満は無いのですが、発売時期がPSP黎明期の真っ只中に産声をあげたことが不運だったと思わざるを得ません。
大抵1つのミッションには複数の場面転換を挟むのですが、その時のローディングが長い長い。
ローディング中はタチコマが走り、稀にたくさんのタチコマが大移動するなど工夫はしていますが、それもすぐに目で追わなくなるぐらいには長いです。
まだデータインストールの無い時代でしたから仕方ないといえばそうなんですが、どうしても頻度が多いので気になります。
ダメージを食らった時、何処からの攻撃なのかが分かりにくいのも気になります。ダメージを受けた差異に、方向によってエフェクトが変われば判別しやすいのではないかなと思いました。
そしてキー配置も難があり、LとRのボタンで左右の視点変更、LR同時押しでロックオンのため操作が煩雑になりやすいです。同時押しが反応しやすいおかげでそこまで辛くはなかったのが救いでした。
当時は携帯機で攻殻が出来る!ってだけで楽しかった思い出があるのでそこまで気にしてはいませんでしたが、改めてやり直すと意外と出てくるものですね。
もう10年以上前のゲームに今の感覚で語るのは良くないかもですが、ロード時間だけは当時から感じていたので余計に辛いです。
重ね重ね、データインストールが存在していなかったのが悔やまれます。
〜もう一つの『s.a.c』〜
FPSゲームとして見るとプレイし辛い所が散見されますが、『s.a.c』シリーズの中編として考えるとかなり面白い内容になっています。
謎を残したプロローグ、散発的に起こる任務、無関係だと思われていた事柄が1つへ収束していく様は、『s.a.c』シリーズらしさを纏った見所満載のストーリーでした。
ローディング中のUMDの音は気になりますが、攻殻ファンなら納得の出来と、そこまで厳しくない難易度になっていますので、是非手に取ってみて下さい。
・上では触れませんでしたが、トグサが使用可能なのも嬉しいです。イシカワもバックアップ要員として音声はあるので、ボーマとパズの声も聞きたかった…。
・アニメから見た方は、サイトー=スナイパーの印象が強いかと思いますが、原作だと全くその気がないんですよね。
どちらかというと突入してドンパチのイメージがあるので、ある意味漫画派もアニメ派もどちらの動きもとれるこの作品で楽しんでほしいです。
・妙に愛されている『ジェイムスン型』もゲーム内に登場し、倒すと隠し武器を手に入れることが出来ます。
どうしてそんな所に…と思ってましたが、段々気にならなくなるのは倒される時も含めて動きがコミカルだからでしょうか。