"シリーズの転換期"って、結果が出て後から言えるものではないでしょうか。
当時の状況を思い返すと、否よりの意見も噴出してた覚えがあります。
事前情報を雑誌で目にした時は、大きく雰囲気を変えたその画面のデザインに驚きましたし、シリーズの方向性が固まってきた印象があったので。
それが日本を代表するRPGになるなんて、その時は露ほども思いませんでした。
ペルソナ3 (PS2)
とある事情により、人工島の達見ポートアイランドに校舎を構える月光館学園に編入することになった主人公は、学生寮にて『シャドウ』と呼ばれる異形と遭遇し、それと同時に『ペルソナ』―シャドウに対抗する力―に目覚める。
理事長の幾月修司の手引きもあり、自身と同じくペルソナに目覚めた「特別課外活動部」に加えられる。
一日と一日の狭間に存在する『影時間』。
この時間に迷い込んだ人間は、シャドウによって精神を食われることで無気力状態となる。
現在世間を賑わせている『無気力症候群』は、この影時間によって行われていたのである。
シャドウに唯一対抗出来るのは、ペルソナの能力を持つ者のみ。
影時間に月光館学園の内部に現れる迷宮『タルタロス』に足を踏み入れる特別課外活動部メンバー。
2009年4月、壮絶な一年が幕を開ける。
現在のJRPGを牽引するペルソナシリーズの起爆剤となった作品です。
学園モノ+RPGの良いとこ取り満載に仕上がってます。
〜当時感じていたこと〜
内容を語る前に。
当時雑誌でゲームデザインを見た正直な感想は、
"納得半分、困惑半分"でした。
アトラス作品の"悪魔"作品は『女神転生』『ペルソナ』『デビルサマナー』『魔神転生』シリーズが主ですが、未プレイの方からするとパッと見違いが良く分からないのではないかと思っていました。
というか僕自身が実際にアトラス作品を手に取るまで全部一緒に見えてました。
ペルソナ3は今までの退廃的な雰囲気からすると、青を基調としたスタイリッシュなデザインが目につきます。
キャラクターデザインも変えたことで、今まで触れにくく感じていた層も敷居が下がった様に見えました。
一方、このタイミングで差別化を図るのかと困惑もしていました。
前作の『ペルソナ2』の作りが素晴らしかったのもあり、ペルソナシリーズはこの形でパワーアップしていくのを期待していたからかもしれません。
その後の評価は語るまでも無いのですが、それでもやっぱり当時は期待と不安を抱いたまま手に取った記憶が懐かしいですね。
〜オシャレなBGM、スタイリッシュなデザイン〜
ペルソナ3を触れてまず最初に目に付く部分は、当時のゲームからはまず考えられないテイストのBGMとグラフィックデザインに仕上げた事ではないでしょうか。
印象的なOP曲と切り絵・騙し絵の様なムービーから始まり、日常や戦闘などの多くの部分をボーカル曲で構成、メニュー画面の開閉時や場所移動における演出など、当時のゲームとは一線を画す出来栄えでした。
曲調は全体としてポップ寄りながら、合間にブルースやヒップホップを感じさせる作りは、グラフィックと共に後のペルソナシリーズにも適用されていきます。
〜学園生活とバトルと青春と〜
ペルソナ3は、学生として1日1日を過ごしながら、ペルソナを活用してタルタロスの上部を目指していく、学園パートとバトルパートの融合で構成されています。
【学園パート】
学園パートのメインとなるのが『コミュニティ(以下コミュ)』というシステムにあり、時間を進める代わりに特定のキャラクターとのイベントを経ることで、ペルソナ合体時に経験値のボーナスが付与され、戦闘を有利に行えます。
コミュはランク分けされ、交流を深めていくことでボーナスは大きくなります。コミュのランクを最大にしないと使用出来ないペルソナも存在するので、イベントを見るのと併せて楽しめる要素になっています。
また主人公は戦闘とは別に、学園パートで使用されるステータスを持ち、それぞれ
・学力
・魅力
・勇気
といったパラメータが存在します。
これらはテストの結果や新しいコミュの交流に必要不可なのですが、上げる為にはやはり時間を消費します。
コミュもステータスもどちらも必要になりますが、どの様に進めていくのかはプレイヤーの判断と決断に委ねられます。
後から振り返った時、その時の行動が翌日以降に影響を及ぼすのを感じる瞬間があり、他でもない自分の選択で先を切り開いている気分に浸れて楽しかったです。
学園以外にもショッピングモール等に足を運べば、装備やアイテム、ペルソナの準備も行えるので学園パートであちこち散策するだけでも面白いです。
【バトルパート】
タルタロスはフロアの構造がランダム生成され、一定の階層まで到達するとボスとの戦い、勝利するとその時点の探索は一旦終了(上の階層に行けないだけで、再度タルタロスを探索することは可能)となります。
戦闘システムも大きく変わり、主人公を除いて味方は自身で判断して動きます。ある程度は指示を出せるので、連れている仲間や状況に併せて作戦を変更していくのが鍵になります。
ちょくちょくクソAIしますが。
バトルで大切な事は弱点を突く、もしくは物理攻撃でクリティカルさせる事で相手をダウン(行動不能)、更に自信はもう一度行動出来る、『ワンモアプレスバトル』が戦闘の主な駆け引きになります。
この時に他の敵を更にダウンさせ、最終的に全員をダウンの状態にさせる事で、パーティーメンバーが敵全員に大ダメージを与える『総攻撃』が使用可能になります。
総攻撃は任意なので、火力で押し込むか、態勢を整える為に見送るのかを判断する事も重要になっていきます。
当然敵もワンモアプレスバトルが適用されますから、こちらのペルソナの弱点や耐性も考慮に入れないと突然窮地に陥ります。
主人公が戦闘不能になると問答無用でゲームオーバーなので、戦闘自体はシンプルですが適度な緊張感は最後まで失われません。
他にも主人公は複数のペルソナを入れ替えて戦える『ワイルド』の特性を持っているため、パーティーメンバーが攻撃重視ならサポートが得意なペルソナにしたり、ワンモアプレスの事を考えて弱点や耐性でペルソナをチェンジする戦略も大事になります。
学園パートもバトルパートも、殆どの要素は時間の経過が発生します。パッケージ裏の"時は、待たない"は誇張でも何でも無く、ゲーム性を表す秀逸なフレーズです。
〜魅力的な登場人物〜
メインシナリオも含め、様々な事情で関わりを持つ人々の機微や描写が優れている点こそ、今作の評価を支える一面でもあります。
パーティーメンバー、コミュは当然として、顔グラの無いキャラクターさえも変化や転機が起こります。
ポートアイランドに住む人々には、学生特有の年相応の悩みや気になること、若年故の経験の乏しさからくる解決までのもどかしさ、大人は主婦同士の井戸端会議やくたびれたサラリーマン、くだらない考えで行動したりと身につまされます。
コミュはそこに一歩踏み込み、其々の葛藤とその経緯、そして主人公と交流を深めた先に訪れた結末まで、とても上手い作りになっています。
初見で不快を覚えるキャラクターも、ペルソナ合体の為に行っていたはずなのに次へ進めたくなる描写には脱帽です。
パーティーメンバーは最もそれが活きていますね。
説明書や公式ホームページに記載された情報は的確ですが、それが全てではありません。
皆何かしらの事情を抱えていたり、物語の途中で新たな問題に直面することもあり、時には各々の想いが倒錯することで特別課外活動部は不穏な空気に包まれることもあります。
当初出会った時点とは別に、皆が別の側面を見せる。
登場人物による"ペルソナ"は物語に深く関わります。
女性キャラクターはコミュ補完ありきになっているのは少し気になりますが、それでもぶつかり合いながらも前に進んでいく彼らの決断と成長は、未成年の不安定さと力強さを感じさせる素晴らしい物語でした。
少し気になる点を挙げるなら敵サイドでしょうか。
物語の構成上仕方ないのですが、合間にイベントなどでもう少し掘り下げても良かったのかなとは思います。
でもやり過ぎて敵の動きや目的がプレイヤーに分かりやすくなるのも良くない気もするので、これが否になるかは個人の主観が大きいかも…。
〜転換期故の荒削りと魅力〜
これまでのペルソナシリーズと雰囲気はガラッと変わりましたが、根幹は女神転生にあることが所々散見されます。
悪魔合体といったシステム的な表面の部分もそうですが、BGMに反してシナリオは時に陰惨な部分があり重めになっています。
特に人の醜い部分や狂気を描いた辺りは女神転生に通ずるものがあり、(極めて軽度とはいえ)モブの一部にもそれが表面化したりします。
面白さは太鼓判ですが、根幹が女神転生寄りになっている関係で、オカルト要素を前面に押し出したペルソナシリーズからは乖離したとも取れる要素は気になるかもしれません。
前作を知っているプレイヤーなら多少は引っ掛かりを覚えてしまっても仕方ないかと。
そして今作でハッキリと否よりの意見になるのが"リバース問題"。
これは特定の女性コミュで発生するのですが、対象のコミュのランクを一定まで進めると、関係が恋人に変化します。
…もうお分かりになったと思いますが、複数の女性コミュを並行に進めていくとどんどん恋人が増えます。そして浮気の扱いになり、発覚すると『リバース』となり暫くコミュを再開することが出来なくなります。
どの段階までランクを上げると恋人状態になるのか分からないので、初見は攻略本かサイトでも見ない限り確実に浮気野郎になります。
勝手に主人公が軽薄にさせられるのも嫌ですが、悪魔合体にも影響が出るのでかなり面倒なシステムでした。
次回作以降は改善が図られているので、余程不評だったんだろうなぁ…。その次回作以降は複数の女性に手を掛けるプレイヤーが増加しましたが。
上記の点が次回作以降では幾分改善されていくのですが、だからこそ本作は他のペルソナシリーズからすると異色の出来栄えでもあり、シリーズ唯一の雰囲気を醸し出しているとも言えます。
まだ良く知らない、アトラス系列は独特っぽくて尻込みしている、他のメディアで見て知っているけどゲームは良く知らない。
どんな方でも触れてみて損は無い作品だと思います。
一大旋風を巻き起こしたペルソナ3、納得の面白さに仕上がっていますよ!
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〜余談スペース〜
・今更なのかもしれませんが、ペルソナがJRPGの代表格に食い込んだのはここからですね。
ここまでになった理由もいつか考察してみたいです。
・特別課外活動部のメンバーの一人(匹)でもある犬、『コロマル』がいますが、今作より定番となるマスコット枠の基になりました。
ただ、他のマスコット枠は少々特殊な立ち位置なので、"純然たる動物のペルソナ使い"は今のところ彼だけでもあります。
・PS2持ってねぇよ!って方はリメイクされたバージョンもありますので、そちらをプレイするのもありかもしれません。
一応貼っときます。